俳句例示
吟詠詩歌 俳句例示
松島や
新設:2012-01-15
更新:2017-11-01

松島(まつしま)
河合曾良(そら)
  松島や 松島や

    鶴に身をかれ ほととぎす

    鶴に身をかれ ほととぎす



          松島や
                  曾良  
       松島や
            松島や
          鶴に身をかれ
              ほととぎす
          鶴に身をかれ
              ほととぎす
【通釈】
すばらしい松島の眺め。折から鳴き過ぎるほととぎすよ、この松島の絶景にふさわしく、声はそのまま、鶴の毛衣を借りて鳴き渡れよ。
【出所】
吟詠教本 俳句・俳文・俳諧紀行文・俳諧歌・近代詩 篇 15頁
参 考
本「松島や」は、松尾芭蕉の「おくの細道」の「松島・元禄二年五月九日・十日」の条に収められている。
本句「松島や」の前に記された「おくの細道」の一節を参考として次に示す。


(そもそも) ことふりにけれど、松島は()(さう)第一の好風(かうふう)にして、(およそ)洞庭(どうてい)西(さい)()(はぢ)ず。東南より海を(いれ)て、()(うち)三里、浙江(せっこう)(うしほ)をたゝふ。島々の数を(つく)して、(そばだつ)ものは天を(ゆびさし)、ふすものは波に匍匐(はらばふ)。あるは(ふた)()にかさなり、三重(みへ)(たた)みて、左にわかれ右につらなる。(おへ)えるあり(いだけ)るあり、()(そん)愛するがごとし。松の綠こまやかに、()(えふ)汐風(しほかぜ)(ふき)たはめて、(くっ)(きょく)をのづからためたるがごとし。(その)()(しき)窅然(えうぜん)として、美人の(かんばせ)(よそほ)ふ。ちはや(ぶる)(かみ)のむかし、大山(おほやま)ずみのなせるわざにや。造化(ぞうくわ)天工(てんこう)、いづれの人か筆をふるひ(ことば)(つく)( )

()(じま)が磯は地つゞきて海に(いで)たる島也。(うん)()(ぜん)()の別室の跡、()(ぜん)(せき)など(あり)(はた)、松の()(かげ)に世をいとふ人も(まれ)々見え侍りて、(おち)()松笠(まつかさ)など(うち)けふりたる草の(いほり)(しずか)(すみ)なし、いかなる人とはしらずながら、(まづ)なつかしく立寄(たちよる)ほどに、(つき)(うみ)にうつりて、昼のながめ又あらたむ。(かう)(しゃう)に帰りて宿を(もとむ)れば、窓をひらき二階を(つくり)て、風雲の中に(たび)()するこそ、あやしきまで(たへ)なる心地はせらるれ。


曾良の解説はこちら