新設:2013-08-19
更新:2017-11-01
静御前(繰絲)
頼山陽
工藤の銅拍秩父の鼓
幕中酒を挙げて汝の舞を観る
(しずやしず
しずのおだまき くりかえし
むかしをいまに なすよしもがな)
一尺の布は猶縫うべし
況んや此れ繰車百尺の縷
回波回らず阿哥の心
南山の雪終古に深し
【通釈】
弟義経の愛人静を捕えた頼朝は、鶴岡八幡宮社前において、妻の政子を伴い、家中を集めて酒宴を催し、白拍子として名の高かった静に舞を所望した。静はやむなく舞を舞ったが、これに興を添えたのは工藤祐経の銅拍子と畠山重忠の鼓である。
静は「吉野山峰の白雪ふみわけて入りにし人のあとぞ恋しき」「しづやしづしづのをだまきくりかへし昔を今になすよしもがな」と歌いながら衣の袖を翻して舞った。静の義経に対する思慕の情に頼朝は怒ったが政子がなだめた。
昔漢の武帝のとき、准南王が謀反して滅びた際に「一尺の布なは縫うべき、一斗の粟なほ舂くべし、兄弟二人のあひ容れず」という民謡が流行った。一尺の布さえも縫うことができるというのに、静の百尺のおだまきを昔にかえすことができないのは何としたことであろうか。すでに兄頼朝の心は義経を許すことができない。かくて義経と静の怨は吉野山の雪と同じように永久に深いことであろう。
【出所】
普及版吟詠教本 漢詩篇(二)98頁
▶をクリックすると mp3ファイル(923KB)を読込ん後に 再生します
吟者:戸田弘岳・唐澤京岳
吟詠は、2013年8月18日開催「第21回神奈川岳風連合会吟詠大会」の構成吟「鎌倉残照」において
「舞」の伴吟として 翔風吟道会所属会員2名が吟じたのを 収録しました。