新設:2011-03-03
更新:2017-11-01
稗搗の歌
松口月城
屋島之浜壇の浦の辺
平家の末路亦憐れむに堪えたり
残党隠遁す上椎葉
山岳深き処炊煙を見る
(民謡)庭の山椒の木鳴る鈴かけて
鈴の鳴るときゃ出ておじゃれ
哀話綿綿栄華の夢
稗搗の俚謡今に至るまで伝う
【通釈】
屋島・壇の浦の戦に敗れて滅亡した平家の末路は憐れむばかりである。生き残った者達のうち、九州宮崎の上椎葉にのがれて隠れ住む一行があった。その生活の煙が山深い処に見える
源氏の将・那須大八郎は、平家追討の任を帯びて此の地に至ったが、鶴富姫と相愛の仲となり討伐することを忘れてしまった。やがて、大八郎は鎌倉へ呼びもどされ、二人はその後再び逢うことはかなわず、鶴富姫は、大八郎との間に生まれた子供を育てながら寂しい生涯を送った。
稗搗節といわれる民謡は、こうした二人の悲しい物語を歌にしたものであるが、その昔から永く歌いつがれて現在も尚歌われているのである。
【出所】
愛吟集39頁 新愛吟集23頁