近代詩例示
吟詠詩歌 近代詩例示
星落秋風五丈原
新設:2010-09-09
更新:2017-11-01

星落秋風五丈原
土井晩翠
祁山悲秋の風更けて
陣雲暗し五丈原
零露の文は繁くして
草枯れ馬は肥ゆれども
蜀軍の旗光無く
鼓角の音も今しづか
丞相病篤かりき

高眠遂に永からず
信義四海に溢れたる
君が三たびの音づれを
背きはてめや知己の恩
羽扇綸巾風軽き
姿は替へで立ちいづる
草盧あしたのぬしやたれ

嗚呼五丈原秋の夜半
あらしは叫び露は泣き
銀漢清く星高く
神秘の色につゝまれて
天地微かに光るとき
無量の思齎らして
「無限の淵」に立てる見よ
功名いづれ夢のあと
消えざるものはたゞ誠
心を盡し身を致し
成否を天に委ねては
魂遠く離れゆく

高き尊き、たぐひなき
「悲運」を君よ天に謝せ
青史の照らし見るところ
管仲楽毅たそや彼
伊呂の伯仲眺むれば
「萬古の霄の一羽毛」
千仞翔くる鳳の影
草盧にありて龍と臥し
四海に出でて龍と飛ぶ
千載の末今も尚
名はかんばしき諸葛亮


    祁山悲秋の風更けて
    陣雲暗し五丈原
    零露の文は繁くして
    草枯れ馬は肥ゆれども
    蜀軍の旗光無く
    鼓角の音も今しづか
    丞相病篤かりき
    
    高眠遂に永からず
    信義四海に溢れたる
    君が三たびの音づれを
    背きはてめや知己の恩
    羽扇綸巾風軽き
    姿は替へで立ちいづる
    草盧あしたのぬしやたれ
  
    嗚呼五丈原秋の夜半
    あらしは叫び露は泣き
    銀漢清く星高く
    神秘の色につゝまれて
    天地微かに光るとき
    無量の思齎らして
    「無限の淵」に立てる見よ
    功名いづれ夢のあと
    消えざるものはたゞ誠
    心を盡し身を致し
    成否を天に委ねては
    魂遠く離れゆく
    
    高き尊き、たぐひなき
    「悲運」を君よ天に謝せ
    青史の照らし見るところ
    管仲楽毅たそや彼
    伊呂の伯仲眺むれば
    「萬古の霄の一羽毛」
    千仞翔くる鳳の影
    草盧にありて龍と臥し
    四海に出でて龍と飛ぶ
    千載の末今も尚
    名はかんばしき諸葛亮
【出所】
朗詠集 124~130
【解説】
詩文は、長い詩のわずかな部分(冒頭、末尾および中間の一部を抜粋)です

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吟者:平木岳栄