秋風の歌
西の海より吹き起り
舞ひたちさわぐ白雲(しらくも)の
飛びて行くへも見ゆるかな
道を傳(つと)ふる婆羅門(ばらもん)の
西に東に散るごとく
吹き漂蕩(ただよわ)す秋風に
飄(ひるがえ)り行く木(こ)の葉(は)かな
あゝうらさびし天地(あめつち)の
壺(つぼ)の中(うち)なる秋の日や
落葉と共に飄(ひるがえ)る
風の行衞(ゆくえ)を誰か知る
風の行衞(ゆくえ)を誰か知る
No | 詩題 | 挿入和歌 | 出所 | 作者 |
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1 | 秋風の歌 | さびしさはいつともわかぬ山里に 尾花みだれて秋かぜぞふく |
桂園一枝・桂園一枝拾遺、新編国歌大観に 見当たらない *1 |
不明 |
2 | 母を葬るのうた | うき雲はありともわかぬ大空の 月のかげよりふるしぐれかな |
桂園一枝・桂園一枝拾遺、新編国歌大観に 見当たらない *2 |
不明 |
3 | 暗香(あんこう) (合唱一) *4 |
はるのよはひかりはかりとおもひしを しろきやうめのさかりなるらむ |
新編国歌大観に見当たらない | 不明 |
4 | 蓮花舟(れんげぶね) (合唱二) *4 |
しはしはもこほるるつゆははちすはの うきはにのみもたまりけるかな |
新編国歌大観に見当たらない | 不明 |
5 | 葡萄の樹のかげ (ぶどうのきのかげ) (合唱三)*4 |
はるあきにおもひみたれてわきかねつ ときにつけつゝうつるこゝろは |
拾遺抄巻第十雑下551 作者表記を含め 新編国歌大観第1巻 勅撰集歌集編歌集P105による 拾遺和歌集巻第九雑下509 作者表記を含め 和歌文学大系32 拾遺和歌集明治書院刊P95による |
躬恒 *5 紀貫之 |
6 | 高楼(こうろう) (合唱四)*4 |
わかれゆくひとををしむとこよひより とほきゆめちにわれやまとはむ |
玉葉和歌集巻第八旅歌1121 作者表記を含め 新編国歌大観第1 巻勅撰集歌集編歌集P444による *3 |
貫之 *6 |
7 | 白壁 | くれわたるやましたみづのさゞなみに かげうちなびくしらぎくのはな |
新編国歌大観に見当たらない | 不明 |
8 | 相思 | 色もなきこゝろを人にそめしより うつろはんとはおもほへなくに |
拾遺和歌集巻第十三恋三842 作者表記を含め 新編国歌大観第1 巻勅撰集歌集編歌集P82による *7 |
つらゆき *7 |
秋風の歌 | ||
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さびしさは いつともわかぬ 山里に 尾花みだれて 秋風ぞ吹 |
<注> 1連ずつ左から右へ配列 |
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しづかにきたる 西の海より吹き 舞ひたちさわぐ 飛びて行へも |
桐の梢の琴の そのおとなひを |
ゆふべ あさ秋の あさ秋風の ゆふべの |
ふりさけ見れば 色はもみぢに 霜葉をかへす 空の |
まづ秋の さびしいかなや かのもみぢ |
道を傳ふる 西に東に 吹き |
いたくも吹ける |
見ればかしこし 山の 悲しいかなや 秋の |
人は げにかぞふればかぎり 舌は 聲はたちまち |
高くも 世を 吹きも |
あゝうらさびし 落葉と共に 風の |
母を葬るのうた | |||
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うき雲は ありともわかぬ 大空の 月のかげより ふるしぐれかな |
<注> 1連ずつ左から右へ配列 |
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きみがはかばに きゞくあり きみがはかばに さかきあり |
くさはにつゆは しげくして おもからずやは そのしるいし |
いつかねむりを さめいでて いつかへりこむ わがはゝよ |
紅羅(あから)ひく子も ますらをも みなちりひぢと なるものを |
あゝさめたまふ ことなかれ あゝかへりくる ことなかれ |
はるははなさき はなちりて きみがはかばに かゝるとも |
なつはみだるゝ ほたるびの きみがはかばに とべるとも |
あきはさみしき あきさめの きみがはかばに そゝぐとも |
ふゆはましろに ゆきじもの きみがはかばに こほるとも |
とほきねむりの ゆめまくら おそるゝなかれ わがはゝよ |