枯野の旅(暮坂峠) 若山牧水 乾乾きたる 落葉のなかに栗の實を 濕(しめ)りたる 朽葉(くちば)がしたに橡(とち)の實を とりどりに 拾ふともなく拾ひもちて 今日の山路を越えて來ぬ 長かりしけふの山路 樂しかりしけふの山路 殘りたる紅葉は照りて 餌に饑うる鷹もぞ啼きし 上野(かみつけ)の草津の湯より 澤渡(さわたり)の湯に越ゆる路 名も寂し暮坂峠 (以下、末尾に続く)
乾乾きたる 落葉のなかに栗の實を 濕(しめ)りたる 朽葉(くちば)がしたに橡(とち)の實を とりどりに 拾ふともなく拾ひもちて 今日の山路を越えて來ぬ 長かりしけふの山路 樂しかりしけふの山路 殘りたる紅葉は照りて 餌に饑うる鷹もぞ啼きし 上野(かみつけ)の草津の湯より 澤渡(さわたり)の湯に越ゆる路 名も寂し暮坂峠 (以下、末尾に続く)
▶をクリックすると mp3ファイル(898KB)を読込ん後に 再生します 吟者:石川岳桂 吟じ方は、平成12年(2000)8月6日 神奈川県本部 指導者講習会で 羽切岳佑先生(講習会開催時 群馬空山岳風会会長・総本部評議員)が指導されたものに基づいている
若山牧水(1885~1928年)は、1922年(大正11年)秋に利根川の水源を訪ねて 岩村田 小諸 軽井沢 草津 小雨 花敷 暮坂峠 沢渡 四万 中之条 法師 沼田 金精峠 奥日光などを旅した。 その旅日記が、『みなかみ紀行』として1924年(大正13年)に出版され 「枯野の旅」が収められている随筆集『樹木とその葉』は1925年(大正14年)に出版された。 写真は 牧水が没してから32年後の1960年3月12日に 本サイト管理人と早川秀郎君が撮影 (末尾解説参照)
白木なす 枯木が原の うえにまふ 鷹ひとつ居りて きつつきは啼く ましぐらに まひくだり来て ものを追ふ 鷹あらはなり 枯木が原に 暮坂峠への道端にあった牧水歌碑2 「みなかみ紀行」より 「右澤渡温泉、左草津温泉」と 道標に刻まれていた
1960年3月11日早朝東京を発ち 軽井沢・草津を経て 湯の平温泉で泊まった 翌朝 湯の平温泉・松泉閣の熊笹生い茂る裏山を越え 小雨から暮坂峠 大岩に抜ける道に出た 暮坂峠までの道は緩やかな上り坂で 包み込まれるような穏やかさと寂しさが漂っていた 暮坂峠に立つ若山牧水の詩碑「枯野の旅」は静かな感動をもたらし 長い休息をとった 峠から先は山道がしばらく続いた 大岩まで歩いたが疲れたため 下澤渡までバスを利用後 殿界戸まで歩き 再びバスで四万温泉奥の日向見まで行き宿を求めた 翌13日は 赤沢山を通り法師温泉から三国峠を越えようとしたが 赤沢山中で吹雪に遭遇し引き返した この旅の目的は 廃線が迫っていた草軽電鉄に乗ることと 牧水の跡を辿ることであり 早川秀郎君との二人旅だった 上の掲載写真は 暮坂峠への道すがら早川秀郎君と撮ったもの