俳文例示
吟詠詩歌 俳文例示
おくのほそ道 より 最上川
新設:2012-10-30
更新:2017-11-01

『おくのほそ道』より「最上川」
松尾芭蕉
最上川は 陸奥(みちのく)より 出でて 山形(やまがた)水上(みなかみ)とす。
()(てん)(はやぶさ)などいふ おそろしき 難所(なんじょ)あり
板敷山(いたじきやま)の 北を流れて (はて)(さか)()の 海に入る
左右山(おお)ひ、茂みの中に 船を (くだ)す。
これに稲積みたるをや 稲船(いなぶね)と いふならし。
白糸の 滝は 青葉の (ひま)々に落ちて
仙人堂(せんにんどう) 岸にのぞみて 立つ。
水みなぎって 舟(あやう)し。
  ()()(だれ)
      あつめて( )し 最上川
      あつめて( )し 最上川





「おくのほそ道」に記された最上川
最上川
画像中央鳥居の後方
木の間隠れに白糸の滝

撮影:2013-10-01


【通釈】
最上川は陸奥に源を発し、山形領を川上としている。碁点・隼などという恐ろしい難所もある。歌枕で知られる板敷山の北を流れて、最後には酒田の海に注ぎ入る。左右には山が覆いかぶさるように迫り、木の茂みの中に船を下す。この船に稲を積んだのを、古歌に稲船というらしい。白糸の滝は、青葉の間から落ち、仙人堂が岸に臨んで立っている。水は満々とみなぎり流れて、舟は危い。

この日ごろ、陸奥・山形の山野に降り注ぐ五月雨を集めて水量を増し、水の勢がいよいよ急に流れ下ってゆく。豪壮な最上川よ。
【出所】
おくのほそ道  普及版吟詠教本 俳句・俳文・俳諧紀行文・俳諧歌・近代詩篇 72頁

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吟者:升水岳森

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       『おくのほそ道』より「最上川」
                             松尾芭蕉
       最上川は 陸奥より 出でて 山形を 水上とす。 
       碁点・隼などいふ おそろしき 難所あり
       板敷山の 北を流れて 果は酒田の 海に入る
       左右山覆ひ、茂みの中に 船を 下す。
       これに稲積みたるをや 稲船と いふならし。
       白糸の 滝は 青葉の 隙々に落ちて
       仙人堂に 岸にのぞみて 立つ。
       水みなぎって 舟危し。
        五月雨を
          あつめて早し 最上川
          あつめて早し 最上川



「おくのほそ道」に記された 最上川の「白糸の滝」
白糸の滝
滝は鳥居の後方
画像外のかなり上部から落下
撮影:2013-10-01