無(む) 欲(よく) 良 寛 欲(よく)無(な)ければ一切(いっさい)足(た)り 求(もと)むる有(あ)らば万(ばん)事(じ)窮(きゅう)す 淡菜(たんさい)饑(うえ)を療(いや)すべく 衲(のう)衣(い)聊(いささ)か躬(み)に纏(まと)う 独(ひと)り往(ゆ)きて麋(び)鹿(ろく)を伴(とも)とし 高(こう)歌(か)して村童(そんどう)に和(わ)す 耳(みみ)を洗(あろ)う嵓(がん)下(か)の水(みず) 意(こころ)に可(か)なり嶺(れい)上(じょう)の松(まつ)
欲(よく)無(な)ければ一切(いっさい)足(た)り 求(もと)むる有(あ)らば万(ばん)事(じ)窮(きゅう)す 淡菜(たんさい)饑(うえ)を療(いや)すべく 衲(のう)衣(い)聊(いささ)か躬(み)に纏(まと)う 独(ひと)り往(ゆ)きて麋(び)鹿(ろく)を伴(とも)とし 高(こう)歌(か)して村童(そんどう)に和(わ)す 耳(みみ)を洗(あろ)う嵓(がん)下(か)の水(みず) 意(こころ)に可(か)なり嶺(れい)上(じょう)の松(まつ)
【通釈】 欲がなければすべてに満足するが、欲求をあらわにすればなにごとにもゆきづまってくる。少しの野菜でも空腹を満たしうるし、そまつな僧衣でもどうやら身にまとうこともできる。山野をひとりで歩きまわっては鹿たちと連れになり、また村へ下っては声を高く張り上げて、子供らの歌に一緒になって歌い出す。岩の下の水は汚れた耳を洗い浄めるによいし、嶺の上の松は心を慰めてくれる私のもっとも気に入っているものなのだ。