新設:2011-05-05
更新:2017-11-01
九月十三夜
上杉謙信
霜は軍営に満ちて秋気清し
数行の過雁月三更
越山併せ得たり能州の景
遮莫家郷遠征を憶う
【通釈】
霜は真白く陣屋に満ちて、秋の気はあくまでも澄んでこの身にしみてくる。空には幾列かの雁が鳴き渡り、真夜中の月は中天に皎皎と冴えわたっている。その月明りのもとに越後・越中の山々、更に今わが手に収めることができた能登の景色が見渡せる。ままよ故郷の者たちは、我等遠征の身を案じているだろうが、こよいはそれを忘れて、心ゆくまでこの絶景をさかなに歓をつくそうではないか。
【出所】
普及版吟詠教本 漢詩篇(一)9頁