江南(こうなん)の春(はる) 杜 牧 千(せん)里(り)鶯(うぐいす)啼(な)いて 緑(みどり)紅(くれない)に映(えい)ず 水村(すいそん) 山郭(さんかく)酒(しゅき)旗(き)の風(かぜ) 南(なん)朝(ちょう)四(し)百(ひゃく) 八十(はっしん)寺(じ) 多(た)少(しょう)の 楼台(ろうだい)煙(えん)雨(う)の中(うち)
千(せん)里(り)鶯(うぐいす)啼(な)いて 緑(みどり)紅(くれない)に映(えい)ず 水村(すいそん) 山郭(さんかく)酒(しゅき)旗(き)の風(かぜ) 南(なん)朝(ちょう)四(し)百(ひゃく) 八十(はっしん)寺(じ) 多(た)少(しょう)の 楼台(ろうだい)煙(えん)雨(う)の中(うち)
【通釈】 千里のかなたまで広がるこの江南では、ウグイスが鳴き草木の緑がくれないの花に映えてひときわ美しい。水べの村や、山ぞいの村には、酒屋ののぼりがはためいている。思えば、その昔このあたりは南朝の都があったところ。当時四百八十もの寺院があったというが、今もなおその名残りを示すかのように、多くの堂塔がけむるような春雨の中にかすんでいる。
